年末年始のご挨拶にかえて

今年もお世話になりました。

 

徒手療法に携わって、もう30年になりますが

一つ一つの技術の意味というものは

歳月を重ねる毎に変わり、そして深まっていくものですね。

 

「進化」ではなく、「深化」ということですね。

それは、一つの技術で言えば、様々な挫折や困難を超えて

継続していくことの中でしか生まれてこないように思います。

 

場の治療技術は、存在ということを問いかけていく治療技術です。

少し具体的に言えば、一つの症状や病理の持つ意味を深めていく技術である言えます。

 

今年を思い起こすと、臨床の中で大変大きかった体験の中に

 「存在は空である」ということを身体感覚で直に感じられたということがあり、

30年継続してようやく得られた偽りのない実りに改めて深い歓びを感じた年になりました。

道元の「然あれば、道を得ることは、正しく身を以って得るなり」という言葉が浮かびます。

 

存在の技術は、時間の技術でもあり、

〈いのち〉に学ぶ技術でもありますから、

情報や知識を積み上げるようにあれこれのアレンジでは出来ないものですし

どんなに他の技術や理論に通じることはあっても

やはり一つの技術そのものが深まっていくこととは異なっているのです。

 

場の治療としての今の技術を深めるために

これまでもずっと大切にしてきたことは

 只ひたすらに身体に向き合い、自己に向き合いながら

触れ続け、感じ続けること・・・です。

 

そこからほんとうの身体という〈いのち〉の舞台が現れて

「時」が生み出され、刻まれ、拡がって

そして、また内に向かって包み込んでくるところから学ばせて頂くのです。

 

この〈いのち〉の舞台の中で

西田幾多郎のいうように

―どこまでも内在的でどこまでも超越的―である〈いのち〉に触れ、

そして導かれながら生み落とされていく新鮮な技術こそが

私の中の本当の〈いのち〉に通じる場の治療技術です。

 

治療が深まることは

ケア-の場そのものを深めると同時に

自己も深まっていくものでなくてはなりません。

 

2020年も身体が語る声にひたすらに耳を傾け、地に足を踏みしめ、思想を深め

一切の偽りのない〈いのち〉のアートとしての治療技術を深めていきたいと思っています。

 

 カメの歩みよりも遅々とした一歩ですが・・

 

2020年もどうぞよろしくお願いいたします。