磨かれるもの

 年月をかけ

どこまでも純化され

研ぎ澄まされた存在の思想は

ときに真剣(かたな)のようである

 

重厚なる光を放ち

 いかに知識や情報や懐古の鎧で武装して近づいても

ことごとく見抜かれ、その鋭い切っ先に触れ、切り通される

 

自らの〈いのち〉を

偽りなく差し出しながら問いかけるとき

一切の別なく

その手元の鍔(つば)を渡し

真綿の衣で限りなく柔らかに後ろから包む

  

研ぎ澄まされた思想は

研ぎ澄まされた治療を産み落とす

 

それは身体に宿した〈いのち〉に

はからいなく向かう純粋な手によってのみ

 削り取られ

磨き上げられ

技となり芸術となる

 

絶えず活かされ、絶えず問うことによって磨き続けなければ錆つき

って眺め、得意げに批評するだけのものとなってしまえば

たちまちその〈いのち〉を失う

 

〈いのち〉を失った思想は難解なパズルを愉しむ脳の満足のための

紙切れに羅列された文字列となり

 

〈いのち〉から離れた技術は張り子の虎と化す

 

〈いのち〉宿す思想が

〈いのち〉ある技術を生み出す

 

他者に向かうのではなく

自己に向かって厳しく問い続けながら

血となり肉となってはたらき

大地にその足を踏みしめている

 

ただ、今、ここに立っている存在の礎となる